ザ・フー(the Who)は、60年代にデビューしたイギリスのロックバンドで、ビートルズ、ローリングストーンズに次ぐ3大バンドであった。
この曲は、ザ・フーの代表曲の一つで、1971年に発表され、イギリスでTOP10に入った。

ビートルズがライブ活動をしなくなった後の1970年前後に、The Whoは、ライブで大活躍したのだが、当時はMTVもなく、2004年までは日本公演もなく、彼らのライブの魅力が日本に伝わることはほとんどなかった。当時の洋楽を伝えるメディアは、主にレコード、FMラジオ、音楽雑誌だったが、ザ・フーはビジュアル的に日本の少年少女に受けにくい存在であった。

しかし、私は10代の頃(1970年代)、映画「ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間」で知って以降、はまった。特に、ピートのギターサウンドと曲作りが気にいった。でも、歌詞は、当時はよくわからないで聞いていた。
それから約15年後の90年代、この曲の歌詞を、後になって、読み返してみて、ザ・フーは、当時のイギリスの若者の心を反映した歌詞だったことがわかった。この曲の真価が遅ればせながら、ようやくわかった感じがした。



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The Who  "Won't Get Fooled Again"
ザ・フー 「もう騙されない(無法の世界)」
作詞・作曲 ピート・タウンゼント(Pete Townshend)
訳詞 有園正俊

We'll be fighting in the streets
With our children at our feet
And the morals that they worship will be gone
And the men who spurred us on
Sit in judgement of all wrong
They decide and the shotgun sings the song

俺たちは道路で戦う
俺たちの子どもと一緒に行進して
彼らが崇拝していた道徳はなくなるだろう
そして俺たちを扇動した人々は
すべてを悪だと判断する
彼らは判決を下し、ショットガンがその歌を歌う

**I'll tip my hat to the new constitution
Take a bow for the new revolution
Smile and grin at the change all around
Pick up my guitar and play
Just like yesterday
Then I'll get on my knees and pray
We don't get fooled again

俺は新しい憲法に帽子で会釈し
新しい革命にお辞儀するだろう
あらゆる変化にほほ笑んだりに大笑いする
ギターを手に取って弾く
昨日と同じように
それから膝まづいて祈るつもりだ
俺たちはもう騙されない

The change, it had to come
We knew it all along
We were liberated from the fold, that's all
And the world looks just the same
And history ain't changed
Cause the banners, they are flown in the last war

変化、それは来なければならなかった
俺たちはそれが全部悪いと知っていた
檻(おり)から解放された。それがすべてだ。
そして世界はまったく同じに見える
歴史は変わっていない
国旗のせいだ。それは先の戦争で翻っていた。

**繰り返し

I'll tip my hat to the new constitution
Take a bow for the new revolution
Smile and grin at the change all around
Pick up my guitar and play
Just like yesterday
Then I'll get on my knees and pray
We don't get fooled again
No, no!

俺は新しい憲法に帽子で会釈し
新しい革命にお辞儀するだろう
あらゆる変化にほほ笑んだりに大笑いする
ギターを手に取って弾く
昨日と同じように
それから膝まづいて祈るつもりだ
俺たちはもう騙されない
ダメ、ダメ!

I'll move myself and my family aside
If we happen to be left half alive
I'll get all my papers and smile at the sky
Though I know that the hypnotized never lie
Do ya?

俺は自分と家族とを離して移動する
俺たちの半分が生き残ったとしても
すべての新聞を手に入れて天国で微笑むだろう
とはいえ催眠状態の人が嘘をつかないことわかってるさ
そうだろう?

There's nothing in the streets
Looks any different to me
And the slogans are replaced, by-the-bye
And the parting on the left
Are now parting on the right
And the beards have all grown longer overnight

道路には何もない
俺には何も違わないように見える
そしてスローガンが置き換わった、ついでながら
そして左翼の政党が
今では右翼の政党で
権力者のあごひげは一晩ですっかり伸びてしまった

**繰り返し

I'll tip my hat to the new constitution
Take a bow for the new revolution
Smile and grin at the change all around
Pick up my guitar and play
Just like yesterday
Then I'll get on my knees and pray
We don't get fooled again
Don't get fooled again
No, no!


俺は新しい憲法に帽子で会釈し
新しい革命にお辞儀するだろう
あらゆる変化にほほ笑んだりに大笑いする
ギターを手に取って弾く
昨日と同じように
それから膝まづいて祈るつもりだ
俺たちはもう騙されない
もう騙されるな
ダメ、ダメだ!

Yeaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaah!
Meet the new boss
Same as the old boss 

イェーーーーーーーーーーー
新しい指導者に会え
古い指導者と同じだ
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spur on 駆り立てる、扇動する
sit in judgment on  に判決を下す、判断する
liberated from the fold (動物を囲む)檻から解放された
by-the-bye ついでながら

constitution 憲法

歌詞の意味を知って、当時のイギリスの若者と日本との違いに驚いた。
イギリスでは、階級制度があり、労働者(ブルーカラー)、中流(ホワイトカラー)、上流とに分かれていた。そして、当時は東西の冷戦時代で、イギリス経済は、英国病と呼ばれるように停滞していった。若者の就労環境も悪化し、政治にも関心が向いていた時代であったようだ。
日本では、1960年代まで、学生運動が盛んで、若者がかなり過激な政治運動に走る傾向があった。しかし、70年代になると徐々に若者が政治運動から離れていった。それが1990年代以降、日本も格差社会となり、政治不信が広がり、この曲に共感できるような時代になってしまった。

どこの国であれ、国家にとっては国民が従順である方が都合がいい。しかし、この曲では「俺たちは(国から)二度とバカにされない」と歌っている。今の日本にだって、通用する内容ではなかろうか。

ちなみに、邦題は「無法の世界」だが、無法(アナーキー)なんて歌詞には書いてはいない。法に則しても、ただ国の思うようにだまされたりはしないって意味だ。

当時としては斬新的なシンセサイザーのバック音も、変革の新しさと、結局は時代は繰り返されることを象徴していたのかもしれない。




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