海街diary」は吉田秋生さんのマンガで、2006ー2018年の作品。
20200509umi最近になって、初めて知って、単行本を1巻から、ツタヤで借りてきて、読んでいる。
今、5巻の最初まで読んだ。
GWは、コロナの緊急事態宣言だったこともあり、家にいる時間が多いせいもある。
映画にもなっているが、まだ見ていない。

4人の姉妹の物語(フィクション)。
神奈川県の鎌倉の一軒家に、両親が子どもの頃、出ていった3姉妹が住んでいた。
その父が3度目の結婚をした後、亡くなった。
それを機に、二度目の結婚でできた異母の妹が、3人姉妹と同居することになる。

このドラマに出てくる人たち、どの人も心理的な特徴や、問題を抱えているのだけれど、それが実によくできている。
お話を考えた吉田さんは、人間観察が鋭すぎる!
過去の作品である「ラヴァーズ・キス」に出てきたキャラクターが再登場している部分もあるが、おそらく、現実のいろいろな家族、病気を経験した人の話を元に、そこから話を広げたり、結びつけていったのではと思う。
70年代から、長年売れている作家さんだから、昔ながらの、マンガ風の笑いも押さえつつ、シリアスな人間関係の展開をうまい具合に織り交ぜて、ドラマとしての完成度がすごく高い!
1ページ当たりの文字の量が多いのだが、結構お得な感じでネタが詰まっている。さすがの完成度。(^^)


家族:

4姉妹のお父さん:
物語は、お父さんが亡くなった知らせから始まる。
上3人の娘たちが子どもの頃、たびたび夫婦ケンカをしていたそうで、やさしい面もあるが、妻とうまく行かなかった面もあったようだ。
3姉妹が長女13歳、次女7歳、3女3歳の頃、不倫相手を妊娠させて、妻と3人の娘を置いて、家出してしまう。お父さんは、不倫相手と仙台に移住したので、仕事も変えたのだろうが・・。

3姉妹のお母さん:
お父さんが家を出た2年後、娘3人を実母に任せて再婚相手の元へ行ってしまった。
当時は、お母さんも若かったろうから、元の夫が不倫していなくなって、次にいい人が現れれば、その男性のもとへ行きたくなるのわからなくはないが、かといって、5歳から15歳の3人の娘もいたわけで・・・。
後になってわかるが、お母さんは、物をどこに置いたかわからなくなって、約束の時間に遅れてしまう。物事のとらえ方が、どこか一方的。そんな注意や認識にやや偏りがある性質をお持ちのよう。それがいい悪いという問題ではなく、こういう人は、他人と関わるときに、ずれが起こりやすいのではと思う。

長女:幸(さち)
両親が出ていった後、祖母と3姉妹とで暮らしていた。その後、祖母も亡くなり、物語の最初では3姉妹だけが、鎌倉の一軒家に住んでいた。
子どもの頃、こういう家庭で育つと、親に代わって、姉がしっかりしないとという役割を担ってしまうのはわかる。
人の面倒見がいいタイプになりやすく、看護師という職業も、さもありなんという設定。
5巻の「群青」で、本人は、看護師を選んだ理由を、人を助けるためでなく、「どこいっても仕事はありそうだし、専門職だからそこそこ給料はいい」からと言っている。
ただ、当時は、小さな妹2人をおいて、鎌倉の実家は離れられないという事情もあったのかもと思う。
そして、幸が、物語の最初で交際していた男性は、妻が精神疾患を患っている医師だった。
家庭で悩ましい思いを持っている人に、気持ちが通じてしまうのもなるほど。
しかし、こういうタイプの女性は、男性のいろいろな面が見えてしまう部分もあるはず。
あと、不倫とは逆に、四女すずのことで「子どもに葬儀の出棺での喪主の挨拶をさせるべきではない」というように、道徳的に頑なな面ももつのも、特徴的ではある。
ずっと、どこか気を張って生きてきた人だろうなと思う。だから、最初の父の葬儀の場面に表れた幸が、仁王立ちしているのは、とても理解できる描写だ。

二女:佳乃(よしの)
飲酒にはまっている。
昔、ホストに100万円貢いだことがあるように、男性を見る目と、関わり方が家庭的でない。
飲酒以外にも、嗜癖(しへき)にはまりやすい傾向があるのではと思う。
表面的には、にょさいなく社会生活を送れているように見えて、妙な悪習慣もしくは男性にはまってしまうリスクを抱えているかも。
ただ、100万円貢だけ貯金していたわけだし、短大出て、すぐに働いているのは、えらい。
カマドウマを極端に嫌うので、もしかしたら虫への恐怖症?

三女:千佳(ちか)
物語の最初は19歳。この子も、高校出て、すぐ働いている。
交際相手が、30代とやけに年上でアフロヘアーで、個性的だとは思ったけれど、話を読むうちに、交際相手のスポーツ店長は、ヒマラヤ登山経験の話など、魅力的で、ふところが深い面もありそうな人だなと思った。
お父さんとの記憶はほとんど残っていない。実際のお父さんが渓流釣り好きなことは、すずに出会ってから聞いて、初めて知ったそうだ。しかし、千佳も、ヘラブナ釣りに興味があるように、どこか遺伝している部分があるのか?と想像させる。ヘラブナ釣りは、スポーツ店勤務だからという理由もあるが、そこの店長と交際していることも影響したのか?

四女:すず
中学生。3人の娘をおいて再婚したお父さんと、不倫相手との間にできた子。上の3姉妹とは異母。
私は5巻までしか読んでいないので、わからないが、お父さんの再婚後の家庭生活はどうだったのだろう?再婚相手(すずのお母さん)は、クモ膜下で急に亡くなったとあるが、すずが何歳のときだろう?
そこがわからないが、中学生になったすずには、自分の周囲の状況を知って、自分を抑えて役割を演じてしまう面と、同級生の男性の気持ちのように疎い面とがあった。
それが、鎌倉で3人の姉と過ごすうちに、徐々に自分の思いに気づき、出せるようになっていく。
すずは、上の3姉妹と出会うまでは、長女として育った。そのせいか、遺伝のせいかわからないが、自分を抑えて役割を演じてしまう性格は、長女の幸と似ている。


一般論として、こういう複雑な家庭環境に育つと、親の遺伝子か関わり方か、原因がわからないけれど、その影響が、子どもたちに連鎖していくことがある。
また、身近に幸せな家庭の見本がなく育つので、伴侶選びがうまくいかないケースもありがち。
しかし、千佳さんのように、父親に直接、接した経験が少なかったり、男兄弟がいないと、交際相手として店長のような精神的なふろころが深い男性に惹かれるのも、わかるような気がする。
同世代の男性は子どもっぽくて、恋愛の対象にならない女性っている。特に女性が19歳のときなら、なおさら。

あと、この4人姉妹は、もめることもあるけれど、なんだかんだこじれずに関係を続けていられているのも魅力。現実的には、兄弟姉妹の関係は、大人になると難しくなってしまうケースもあるように思うが、両親がいない期間が長かった分、兄弟姉妹の関係が強まるのか、・・どうなんだろうね。

登場人物が多く、それぞれが身近な知り合いだった関係も多く、それも面白い。
鎌倉の古い一軒家で、梅の木があって、その梅で漬けた梅酒があったり、風呂場にカマドウマが出たり、いろいろな思い出が込められたシーンが多いのもいい。
作者と世代が近いせいか、昔の日本も垣間見える。

映画では、多少設定が違うみたいだけれど、YouTubeの予告編だと、こんな。
映画のロケ地を紹介したサイト「*鎌倉さんぽ*マンガ『海街diary』の舞台へ[ロケ地巡り]」もあった。






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